【本】有機野菜はウソをつく
煽ったタイトルなので、また、テレビに出ているような御用学者の本かなと警戒しながら読んでみた。
著者はFood watch Japan というサイトの編集長を務めている。
結論からいうと、農業技術に関して書かれている部分がとても参考になった。
特に、植物がどのように栄養を吸収し育つのかであったり、微生物の働きなど、
まだ、自分の中で概論としては知っているが、極論として知らない箇所の記述が
丁寧に説明されており、なるほどと理解が進んだ。
自分のような就農間もない者にとっては、新書でこれだけの知識を得られるのは
費用対効果が非常に大きいと思う。
有機栽培か慣行栽培かという二元論的なところで、優劣をつけたいのが消費者心理だ。有機栽培のほうが健康であるや美味しいというイメージが消費者側にはあるが、著者はそれを真っ向から否定する。
現在、有機野菜に関しては、日本では有機JASという規格で法整備しているが、
底には落とし穴があると。有機JASの規格そのものは、環境に配慮した農法という
主旨の内容であり、有機栽培であるから、身体によい、健康的だというものになっていない。
有機栽培でできた農産物が、健康であり、安全で、美味しいというのは、販売側の後付の販売促進目的のためものであり、それが、私たち消費者の中で浸透しているため、有機栽培でできたものに上記のような印象をもつようになった。
有機栽培と慣行栽培の優劣の問題に、ロジカルに著者の意見が切り込んでおり、
胸の中のもやもやがすっきりするような読後感がある。
著者の意見は、有機栽培、慣行栽培問わず、適切な農法で栽培された野菜を生産者は目指すべきだという点にまとめられる。